United Studio Technology社は2018年アメリカルイジアナ州で開業された新しい会社。長年オーディオ業界に携わってきた技術者2名中心に立ち上げたガレージメーカーである。業界標準のノイマンのクローンは多数あるが、かなり新しいものになる。
いわずもがなU87のクローンであるが、U87でも古いバージョンU87iを意識したビンテージと新しいU87Aiを意識したモダンバージョンの切り替えができることが特徴。
指向性も本家同様にオムニ、カーディオイド、双指向を切り替えることができる。
パッドもローカットも付いており、価格を考えるとかなり凝った内容となる。
形状は本家と違ってトップが平面で角ばっている。まあデザインまで真似たくないというのはある意味心意気かもしれない。
さて実際の音だが、結論から言うと普通に良い音。個人的にはビンテージモード一択だった。ギターなど楽器にはモダンでいいかもしれないが、シビランスがきつくて好みではなかった。以前使っていたTownsend Lab SphereL22のデフォルト音に似たシビランスである。なのでシャウトするとチリチリした音が出てくる。このあたりは声質や曲で使えるのかもしれない。
ビンテージモードは、モダンよりゲインは低めだが、シビランスも抑えられ中低域が出てくる音である。それでも想像していたよりは硬めの音だった。もうちょっと低域が強めでも良いかとは感じる。ただし音のバランスも良く、クセもないので汎用性が高いマイクである。次回の歌録りで実際に使ってみる予定だが、おそらく問題なく仕事をこなしてくれるだろう。
実際にTLM49と同じ環境で比較したが、TLM49のほうが押し出し感が強く(ミッドあたりが強くでる)、Twin87はより上品な音であった。
基本的にはTLM49故障時などのサブマイクとして選んだのだが、メインで十分使えるマイクだし、傾向の違う2つの音が録れるのも便利である。
もちろん高級なチューブマイクなどと比較はできないが、価格を考えるとかなり高品質なクローンだと言える。
同価格帯ではWarm Audio WA87が筆頭だが(海外ではStam Audioが人気だが国内に入っていない)、WarmAUdioは著名なパーツを取捨選択して良い音に近づけるスタンスに対し、United Studio Technologyは満足できる音のために自社でパーツまで作り上げる(トランスなども自社製)スタンスで同じ目的のために、異なるアプローチをしているのも興味深いが、私はUnited Studio Technologyの姿勢に賛同する意味からもこちらを選んだ。単なるノイマンクローンではない新しいアプローチであることは間違いない。